※ネタバレあり

 今作は毎回驚きをくれるなと思います。
 まさか作中ダンスを披露してくれるとは思わなかった。そしてらんこは何故張り合おうとするのか。それはアイドルの役目では無いはずなのに。いや、笑えるんですけどね。

 今回の内容は、みなみが自分の夢が海藤グループで働くことではなくなってしまったことを両親に知らせるという物。
 両親が優しいからこそ、期待を裏切ってしまう不安に押し潰されそうになるみなみが描かれているという内容。
 それの景気づけにクリスマスパーティが催されている、と言う構成。

 今回あらすじ少なめなのは疲れていたからではありません、決して、いやそんなことはないはず……。
 ごめんなさい疲れてました。見逃してください。というか今回の構成、下記のようなサンドイッチだったわけです。多分書こうとするとややこしくなるので、ちょっと省略させていただければ。
 みなみの将来→クリスマスパーティ→みなみの将来→シャット襲来→みなみの将来

 2話構成の後編と言うことで、丁寧にみなみの心境を描いているのが印象的な内容となっていました。
 北風博士は前回外国にいたことになっていましたが、この一週間の間に帰国してみなみと会ったと言うことなのでしょうね。今作、何気にリアルタイムでも作品内でも一週間程度は経っているという構成を良く使います。明確には示していないようではありますが。

 みなみの、夢が変わったことを打ち明けることの苦痛というのは、何となくではありますが贅沢な悩みなのかなと思いました。子供だからこそ悩む権利があるのは当然として、それでも手を伸ばせばそこに安定した、期待に応えることもできる将来が約束されている。
 にも拘わらず、そこから抜け出して獣医という実現できるかわからない不安定な世界へ飛び込んでいく。大人になった自分が見ていると、みなみの両親はただただ凄いなと思わざるを得ません。
 海藤グループに勤めてもらうと言うことは、そりゃあ厳しさもあるでしょうが、それでも両親の庇護下であることに変わりないわけです。みなみが才覚のある女性であり、トップに立つ素質があることも充分描かれていて、海藤グループに勤めたとしても成功する未来が想像できる。そういうお膳立てがあったとしてもです。
 以前、北風博士に両親が海藤グループへ入ることを提案して断られていました。言うなればみなみは、そうやって北風博士が断ることで身を置いている世界に飛び込もうとしているわけで。
 それを認めることができる両親は、みなみのことを信頼しているというのもあるのでしょうが、やっぱり凄く度量のある両親なのだなと思う訳でして。と言うか今作はそういう大人が非常に多いように思います。ていうか全部かな。

 反面、その両親の正のイメージを描いている反動は、ディスピア側で描いているのでしょうね。今回のシャットに対する「失敗作」扱いもそうですが、今までの内容を見ていると、ディスピアの行動は親としての負の部分を描くためのキャラのように思えました。
 子供たちを自分の目的の道具のように扱い、夢を見ることを禁じて、使えないとあれば失敗作扱いする。悪い親の代表、みたいな感じなのかなと。

 前述しましたが、クリスマスパーティの演出も素晴らしかったですね。四人のダンスは正直衝撃でした。思わず巻き戻して見直したくらい。
 ここ、何気にはるかが学園内でも一目置かれた存在になっていることを示しているのですよね。みなみやきららは言わずもがな、トワは入学当初からその容姿と立居振舞から注目を浴びていました。
 そんな三人と同じステージに立って違和感なくみんなから受け入れられているということ、これははるかが入学してから築き上げた評価に他ならないのですよね。
 思い返せば確かに、はるかはそのような扱いをされて然るべきな活躍をしてきているのですよね。パフを飼うことを許してもらうよう活動したり、妹が来たときバレエもしっかりと演じていたり、学芸会で足を挫いたロミオのためにアドリブをしたりしていました。
 他にもはるかは毎朝ジョギング、庭の手入れも率先して行っているという描写も描かれていたし、バイオリンだって頑張って練習している。はるかの頑張りをみんな見ていたのだと言う証明が、このダンスなのだと思うと、感慨深い物があります。
 というか、演劇の時にジュリエット役に抜擢されて誰も反対しませんでしたし、きららのためにファッションショーを開くよう率先して提案してもいるのですよね。きっと書いていけば切りが無い程、はるかは頑張っている。そして、食堂で毎回大盛りを頼んで完食している。こんな子が目立たないはずがないし、一目置かれないはずもない。その正当な評価が、ただただ見ていて嬉しいです。
 そして、このことって、すごく重要なことのように思うのですよ。プリンセスに相応しいと評価される三人の中に(というか一人は本当のお姫様なのですが)、一人普通な女の子が混じって、それが受け入れられている。嫌な書き方をしますが、プリンセスとして同格の位置にある。
 はるかの夢である花のプリンセスになることは、学園内ではもう叶いつつあるのではないかなと、何気に思いました。

 とりあえずらんこはこの四人のダンスはともかく、ゆいにまで張り合おうとしているのはどうなのかなと思いました。いや褒め言葉的な意味で。
 前述していることではありますが、それでは芸人ですよ。アイドルじゃないのですよ。でも、身体を張れるアイドルって人気出るとは思いますけどね。とりあえずみなみのことが話の主体なのにらんこのことが気になってしょうがないわけですが、正に今作のジョーカー、出るだけで場を支配するといったところ。
 パフに喋らせて腹話術に見立てたのは、アイデア賞だったと思います。

 みなみの表情も今回気合い入っていました。目の表現が良かったですね。今まであまりみなみは泣いたことが無い印象だったので、今回の表情豊かなみなみは非常に新鮮に映りました。あと、やっと心の底に秘めていた思いを吐露できたのだなとも。

 丁寧に、それぞれの夢へと進んでいく様をしっかりと描いていて良かったと思います。最終回に向かっているのだなという、そういう予感を感じさせてくれる作品は、大好きです。
 で、今回も失敗してしまったシャットは茫然自失と言う様子でしたが、とうとう変身を遂げるみたいです。美しさにこだわることを否定されたシャットは、どんな最期を遂げるのか。それとも生き残るのか。果たして、といったところでしょうか。



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過去感想は下記より
アニメ感想:2015年夏期まとめ