※ネタバレあり。酷評記事のため、今作が好きな方は参照注意です。

 30話も29話同様に悪くはない。これだけは書くべきなのでしょう。なるべく捻くれた目線で見たくないので、そこだけは書いておくべきなのだと思いました。
 今回、情報が今作としては多くて多少ごたついていたものの個人的には面白かったのです。ギャグとシリアスとでメリハリもありました。魔法に反する物として「ムホー」があることが示されました。そのためにリコの「立派な魔法使いになる」という夢までも、否定されそうになっています。ことはがその「ムホー」に関わりがある可能性が示されました。そしてそのために、カタツムリニアに乗る二人は浮かない表情をしていました。
 そんな中、一人だけ脳天気なみらいが、まるで揶揄されているようなラストとなっていました。
 こういう今後の布石の天こ盛りは、それだけで個人的にはワクワクするのです。だからこの話だけで見れば、本当に面白い回なのです。

 たった一つの問題は、今作においてそれらが今後の布石になるのか定かでないことです。これ、個人的には「たった一つ」と書くだけの意味があるほどの欠点です。
 その欠点が生み出されるに至る原因にもなっているのだと思いますが、再三感じることがあります。
 ある展開を描きたいと考えた際に、最低限用意しておかねばならないお膳立てが、本来は用意されるべきなのかなと思います。今作はどう足掻いても、その準備が欠落した状態で描かざるを得ない状態になっている気がするのです。そしてそれを補うために過去を捏造しなければならず、信頼を失っていくという悪循環。
 だからある意味気の毒だなと思う部分もあるわけでして。
 いや、だってこの30話の脚本を担当されている方は、ものすごく上手く描かれていると思うのですよ。渾身といって良いくらい。

 話を布石のところへ戻しますが、恐らくは今作においては、リコとことはの愁いを帯びた表情だけが要素として回収されると思われます。そしてみらいにおいては、もしかしたら何も無いのでは無いかなと。夢を見つけるくらいでしょうか。きっと彼女は夢で悩みません。
 みらいはそういうキャラとして描かれているので、ある意味一貫性があると言えるのですけどね……。

 あらすじの後は粗探しも厭わず書き殴ります。

++あらすじ++
 補習メンバーの夏休みの自由研究を手伝うこととなった。

 そんな中、ラブーの他にも二人が封印から復活する。他にも封印されている者はいるらしいことが示される。
 ラブーはプリキュアを厄介な相手と言い、仕留めに赴く。

 夏休みの自由研究は、補習メイトがそれぞれ抱く夢に基づく物だった。
 リコはそれを聞き、自分の「立派な魔法使いになる」という夢に具体性が無いことを悩む。

 みらいとリコはことはによって白鳥の衣装を着せられて、リズの元へ飛ばされてしまう。
 リズの所へ行くと、リコは悩みを打ち明ける。
 「立派な魔法使い」とは、リコにとって両親のことであり、姉のリズのことだった。
 リズは自分が教師を目指したのはリコのおかげであると言う。リコに魔法を教えていたから、みんなに魔法を教えることの楽しさに気付けたのだと。
 だからリコも好きなことを見つければ良いと言う。

 ことははみらいとリコに白鳥の衣装を着せてしまったことを謝ろうとしている。
 その中で、自分が何故みんなが驚く魔法が使えるのか悩む。

 みらいとリコが戻ってくると、ラブーが襲来する。ドンヨクバールを呼び出し、フェリーチェを襲わせる。ラブーは自ら、ミラクルとマジカルに襲いかかる。
 そして、彼の使用するムホーのことを話し始める。ムホーは「地上のあらゆる道理を超え、強大なエネルギーを自在に操る力」であるという。勉強しなければ使えない魔法とは違うのだという。

 追い詰められるプリキュアたち、しかしミラクルが立ち上がり力を発揮して、ラブーを圧倒。必殺技を放ちひるませる。その後ドンヨクバールはフェリーチェの手によって倒される。

 見事自由研究は完成。夕方にカタツムリニアに乗って三人はナシマホウ界へ戻る。しかしみらいとモフルンの明るい表情と比べて、リコとことはは浮かない表情をしているのだった。
++++++++

 と言ったあらすじ。情報量が多いので、少し多め。

 冒頭のセリフ運び色々おかしかったなと思いもしますが、ひとまず気にしたら負けだと思いました。このような会話。
*****
校長先生「何か起こったら教えてくれ」
リコ「わかりました、私たち今日でナシマホウ界に帰るんです」
みらい「色々とお世話になりました」
校長先生「うむ、(以下略)」
*****
 リコと校長先生の会話、繋がっていないのではなかろうか。いや重箱の隅をつついているのはわかるのですが、とりあえず帰る件はみらいに喋らせるなどして間を作って、話題が転換されたことを示すべきな気がしました。

 上の方で「たった一つの問題」なんて書いてはいますが、基本的にまほプリで起こっているツッコミ所は大体そこら辺の部分に集約されるように思います。
 補習メイトの夢もリズが先生を選んだ理由も、今まで彼女たちの夢のことはほとんど描かれず、唐突にこの30話で描かれたものです。リズの方はまあ、6話で描かれていたと言えなくもないかもしれませんが。
 ともかく夢に関しては、「みらいが夢を持っていなくて将来夢を持てたらいいなと考えていること」、「リコが立派な魔法使いになりたいという夢を持っていること」が度々描かれた程度です。
 ここら辺は、みらいやリコが夢のために何かしらアプローチを積極的にした描写がほとんどないので、描かれる度にそう言えばそうだったなと思い出す要素になっています。
 でも何かしらリコが感化されるような話を書こうとすると、こうするしかないとも思うわけです。むしろ、急拵えなものの捏造しなかっただけ、ファインプレーと言えるかもしれません。
 ただ、今作で夢の要素が出てくると、個人的にはテーマの摘まみ食いという印象を強く感じてしまいますね。後述しますが、メインテーマというか土台であろう魔法も、立ち位置が時々で変わるせいで、訴求したいところだけ摘まみ取って描いている印象を抱いてしまいます。

 もっと「たった一つの問題」の件について言うと、前回の次回予告と本編の内容も矛盾していることが挙げられます。前回の予告では、さもみらいの宿題が終わらないかのような口振りでしたが、蓋を開けてみると補習メイトたちの自由研究でした。
 つまり、前回のエンドカードでみらいが彫像を作っていたのは、補習メンバーのように自由研究を終わらせようとしていたためということだったと。
 次回予告が次回予告として成り立ってない作品、しかも主要人物の発言が次回の内容と結び付かない作品というのは、筆者もあまり見たことがありません。ギャグアニメくらいでしょうか。ただ、それはその狂った状況が許される前提が築かれていました。
 なので今作においてのこれは、個人的に不親切という言葉以外思い浮かばないです……。

 「ムホー」の使い手ラブーに対しての反論もまた破綻しているのです。
 魔法は勉強しなきゃ身につけられないのに、大したことがないといった発言がされます。みらいはそれを、補習メイトやリズのことを思い、魔法は素敵だと言った言葉で押しのけます。
 ただこの反論、この作品は後ろ盾を自らぶち壊している。魔法は一所懸命勉強しなければ習得できない。なのにその魔法を使わないことを美徳とする描写が度々描かれている。そのせいで、ラブーへの反論として成り立たないのです。
*****
ムホー:生まれつき使える。生命を与えるなど強大な力を振るえる。
魔法:勉強しなければ使えない。できることは生活を便利にする程度。
電化製品:勉強しなくても使える。できることは生活を便利にする程度。
*****

 そして魔法はバーベキューの回や部屋の模様替えの回などで電化製品と同一視され、使わないことの尊さを説かれています。
 穿った見方をしているのかもしれませんが、ムホーと電化製品ってできることの範囲に違いはあるものの、「勉強」とは縁のない同一視すべきものなのではないかなと。
 だから、電化製品と同一視される魔法もまた、作中の描写も考慮したら否定されざるを得ないように思ってしまうのです。

 前述していたテーマの摘まみ食いというのは、こういう部分に当たります。しつこいくらいに書きますが、魔法を一所懸命学んだことを肯定しつつ、便利な部分を否定して使わないことの尊さを描いている。
 努力の肯定も描きたいのでしょう。便利な物に頼らないことも描きたいのでしょう。それはわかります、わかりますが、成り立たないのです。
 魔法が最初から容易に使えるならば成り立つのです。努力を要した時点で、便利なもの路線は切り捨てるべきだったと思います。

 個人的には、もうごまかしきれないくらいの矛盾だと思います。ことはが仲間に入って、魔法は便利だけど使わないことが美徳であると認識させる展開が24〜26話までで描かれているのです。さすがに一ヶ月程度では、時間の経過で記憶を朧気にさせる戦法も通じないのではないでしょうか。今作を熱心に見ていればいるほどに、今回のみらいの発言は大混乱を招く原因になる気がします。

 話がずれますが、なぜみらいやリコは「ことは」と呼んであげないのだろうか。
 多分主役が呼んであげないと覚えてもらえない気がするのですが、大丈夫なのかな。
 あと、大したことはできないとか言っていたけど、補習メイトがテレポートしてきたときは、「いや魔法ってすげえじゃん」と思ってしまいました。もう、基準がわかりません。

 ただ、興味深い描写もあるのです。
 それは上記ではことはとムホーと書いていましたが、もっと深読みすれば「リンクルストーン」と「ムホー」の関係になります。
 これ、もしかするとリンクルストーンってムホーの産物なのではないかという話になるのですよね。つまりモフルンもことはも、敵の力によって生み出されたものであるという話になるのではなかろうか。
 もしそうであるならば、かなりの隠し球だと思うのです。これはかなり面白い。
 しかし如何せん敵を主人公たちと180度の性質を持つ存在とか、主人公たちを否定する存在として描いてこなかったのが足を引っ張りそうです。
 「否定しあってきた物が、自分たちのかけがえのない存在だったと判明する」というロジックにして、初めて輝く設定だと思う訳で。

 あとムホーに関しては提示されたのって、これが初めてでは無いのです。初出は27話、ラブーによって『プリキュア』の前で説明されています。その際は、闇の魔法はムホーと似ていると言ったことが示されていました。
 そしてその際は、プリキュアたちは彼の説明を全面スルーしています。
 どうしてこの30話ではその存在のことを訊ねて、27話では無視したのか。後になって物語の雑さに気付かせるとか、伏線みたいなことしなくていいと思います。
 ……27話の脚本家? そりゃあもちろん、今作シリーズ構成担当、村山功さんその人です。
 
 こんな風に魔法への態度が頻繁に変わるのは、見ている人たちにとって苦痛でしかないのではとひねくれた思いを抱いてしまいます。
 今作を純粋に楽しめているのって、28〜30話だけを見た人なのではなかろうかと。
 てか補習メイトたちの将来の夢が、別に魔法を使わなくても実現できる類の物なのはどうなのかなと思いましたね。あまりに人間界と違いが無くて、魔法界の設定用意する意味あったのかなと思ってしまいました。

 個人的には、みらいが夢の話で終始明るい様子でいることを恐ろしいと思ったのですよね。リコが悩んでいるのなんか他人事といった様子でいたから。もっと言えば、夢という事柄が自分に関係することなんか無いような口調だったから。
 なんでこんな様子なのかはわかるのです。みらいはそういう人間だから、完璧なキャラクターらしいから。
 夢が叶わないかもなんて、みらいは考えないのです
 
 正直、身に降る火の粉を払うという作風にも限界があることを今回は露呈している気がします。
 特にラブーの言っていることがおかしい。他の仲間の封印が解かれていない理由をプリキュアに邪魔されたからとしていました。しかし彼女らは自分たちの目の前で何かが起こらないと何もしないので、こっそりやれば簡単に封印は解けると思うのですよね。
 だったらラブーの仲間はさっさと人間を滅ぼせていないことを責めればよかった。
 男の声の方が過ぎた力みたいな意味ありげなセリフを言っていましたが、どこまで掘り下げるのだろうと不安になります。

 次回予告では今までの中では一番危機に陥っているように見える場面が描かれていました。
 ラブーが本気を出したようです。これはつまり、そういうことになるのでしょう。倒されてしまうと。……ならないことを願っていますが果たして。
 予想が当たってしまうとなるとかつて戦った敵を番外編のような構成で出した2話後にそんな話を持ってくるのは、展開がどうというより何か根本的な部分が欠けている気がしてならないというか。何だかなあと言う気分になります。



魔法つかいプリキュア! Blu-ray vol.1

 ※上記以外の物でも良いので、リンク踏んで何かを買っていただけると励みになります。



過去感想は下記より
アニメ感想:2016年夏期まとめ