※ネタバレあり。酷評記事のため、今作が好きな方は参照注意です。

 みらいが邪魔。ひとまずこれだけ書いておきましょう。
 そして前回と引き続き、どうして今になってこんな話を描くに至ったのか疑問。
 でも、良かったと思うのです。今作で本当に珍しく、少しだけ感動した気がします。前回がいつだったか思い出せませんが。
 ただ、プリキュアたちの行動じゃなく、「クラスメートであるゆうと」の行動にではありますが。ほぼ真っ新なキャラクターが一話完結の話で登場し、その中でしっかりと彼の意志を描きつつ話をまとめてくれると、そこの部分だけは感動できます。
 
 もうオブラートに包むのも限界なので書いてしまいますが、見ているときに自然とみらいの行動をシャットアウトしてみている自分が居ます。彼女が居ないものとして視聴すると、しっくりくることが多くなりました。
 クラスメートと交流したのはリコとことはですし、クラスメートに感化され成長したのもリコとことはなのです。
 この部分だけは、みらいと切り離して、しっかりと良かったと書いておきたいのです。ただ、リコの行動に対しては、思うところがなかったわけではありません。けれどそれは彼女の性格として、言うなれば愛嬌として捉えておくべきだろうと思います。そこを突っついてしまったら、それはさすがに捻くれている気がしました。

 で、ですね。今回の内容って、正しくその「みらい」という問題点を浮き彫りにしているなと感じたのです。
 そんなわけで、あらすじの後は色々そういったことも含めて書き綴ります。

++あらすじ++
 生徒会長の立候補者がまだ居ないと言うことで、成績の良いリコがなるべきではないかと言われる。リコもその気になって立候補することにした。
 けれどクラスメートのゆうとも立候補をするらしい。

 デウスマストの眷属の一人、オルーバは妖精チクルンに命令して、プリキュアの調査をさせることにする。チクルンは調査の中で、モフルンがプリキュアたちの大切な要素だと嗅ぎ付ける(時系列飛んでいますが、ここでぜんぶまとめてしまいます)。

 かなやまゆみたちの協力を得て、色々と準備をするリコたち。モフルンもイメージキャラクター、ことはもうちわを作って応援する。翌日から演説を始めるが、ゆうとは内気な性格のためかあまり大きな声は出せない様子。
 旗色はリコが有利に思われた。リコたちは生徒たちの要望を聞き出すことにする。しかしその内容は実現するのが無理といって良いもの物ばかりだった。

 ことははゆうとが花壇を直しているのを見つける。
 リコもまた、ゆうとが図書館の整理をしているのを見つける。そしてゆうとが、学校が抱えている問題を解決しようとしていることに気付くのだった。
 また、ゆうとに生徒会長になったら何をしたいか訊ねられ、悩むことになる。自分の夢である立派な魔法使いと同様に、具体的なことを考えていなかったことを。
 みらいは、みんなの要望を叶えることだけが学校をよくすることなのかと疑問に思っている。

 翌朝ことははゆうとの応援もしたいのだと、リコのうちわと同様にゆうとのうちわも作成している。
 ゆうとも選挙当日で落ち着かないからと、早く来ていた。
 そこにベニーギョが襲いかかる。追い詰められるが、ゆうとが花壇を守ろうとしているのを見て、リコは覚醒する。素敵な学校にするために必要な物がわかった、と。そして、リコ自身もゆうとのように学校を守りたいと。
 ドンヨクバールをリンクルステッキの力で遠くへ飛ばし、その後撃退する。

 選挙の演説では、リコは自分が生徒会長になって何をしたいか考えてなかったことを告白する。そして、応援してくれた人に謝り、自分よりもゆうとに生徒会長をしてほしいと伝えるのだった。
 その後、リンクルストーンガーネットに認められ、ゆうとと握手をするのだった。
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 こんな感じのあらすじ。細部が違ったら申し訳ありません。

 最初に私的なことを色々書かせていただきます。
 今作においての面白さの基準は、個人的に相当低いのです。以前にハードルを低くしていたみたいなことを書きましたが、そのハードルは上げていない状態です。
 要は、色々な作品がこの世の中にはありますが、それらの作品がやっていて当然なことを今作ができていたとき、面白かったとか良かったとか書いているのです。
 面白かったですね! と書いている中で、「他の作品なら特筆すべき事でもないけどな」とか考えています。でもまあ、そんなことぐちぐち書いていてもしょうがないではないかとか、思いもするのです。
 あともう一点、今作の感想を書くのは恐ろしいほど体力を使います。他のことで同じ文章量を書くのとは異質です。録画の視聴、感想の書き出し、諸々全部時間がかかります。
 ……あと残すところ十数回ですから、頑張っていきましょう。

 あとゆうとの描写について今回は「良かった」と書くつもりなのですが、最初に書くべきことは書いておこうと思います。
 ゆうと、実は最初に登場したときこんな内気なキャラじゃなかったのですよね。リコが頭が良いと聞いて、眼鏡をくいっと上げて「負けない」と意気込むくらいには、人見知りしない人物なのです。今回、えらく緊張していましたけど、少しその場面の性格とずれているように感じましたね。
 ただ、そもそもゆうとという人物の掘り下げが今回初めて行われたので、性格のズレかどうか判断する余地もないとは思います。中学生の男女間の交流って少ないですから、性格を初めて知るというのもまあ、まだ良いと言ったところでしょうか。
 生徒会長への使命感があるならどうして締め切りぎりぎりまで立候補しなかったのかというのも、内気だったから仕方ないと書くことができましょう、
 なので、筆者のいちゃもんくらいにしておきましょう、ここは。

 リコが周りに薦められる形で生徒会長に立候補するのは、前述した思うところではあるのですが、もうこの煽てられたら木に登る性格は彼女の性格として捉えて良いのでしょう。
 最後のスピーチで顧みて反省していますし、彼女の夢が具体的な形を成していないことの現れでもあるわけですから。

 まゆみが選挙における宣伝が得意という要素、これの描き方は首を傾げるのです。
 かなに「こういうの得意」と言わせたのは本当に危険な発言だと思います。これ、わかるのですよ。かなとまゆみが仲良くなった証拠なんです。前回の話が無視されていないという、大事な証拠なのです。
 今作、筆者の記憶が正しければラブー撃退前は、こういう以前の描写が拾われると言うことがほとんどありませんでしたから。あったとしても、よく言えば大いに内容が補完されて、悪く言えば内容をすり替えられて、そういった回想が描写されていたのです。だから、すごく貴重であり、見ていて喜ばしい描写なのです。
 でもですね、冷静に考えるとやっぱりこの発言は危険なんですよ。
 何で冒頭で筆者はみらいが邪魔と書いたか、その理由がここにあります。というか、もっとありますが都度書きます。
 みらいは一年前からまゆみと友人なのです。まゆみが転校してきて、初めての友人なのです。このセリフ、本来はみらいが言うべき物ではないのかって、思ってしまうのです。しかし、みらいはまゆみがてきぱきと選挙活動の段取りを決めていくところから、かなが「まゆみはこういうのが得意」と嬉しそうに言い、イメージキャラクターをモフルンに決めるまで、一切喋らないのです。ニコニコ黙って軽く頷くくらいのことしかしません。
 そのせいで、みらいはまゆみと大して親しい友人ではないように見えてしまう。

 ……ただ、まあ、みらいって実は、他人に興味が無いような描写がされてはいるのですよね。というか、他人の気持ちを推し量ることができない描写もされています。だから、ここでだんまりを決め込むのも、まゆみがこういう広報が得意なことを知らないのも、説得力があるのです。
 30、31話で、リコとことははそれぞれ悩みを抱えます。それらに対して、みらいは一切の興味を示しませんでした。「大丈夫?」とも訊ねませんでした。また、リコが冷凍ミカンを解凍する魔法だけ苦手なのも、みらいは知っているのです。なのに、リコが真剣になって魔法をかけた後に、「大丈夫だよ」「きっと成功しているよ」と励ますことすらしません。みらいはそういう人物なのです。
 ですから、まゆみやかなの発言にだんまりは、実績に基づいた説得力ある描写なのです。
 解釈の仕方によっては、悩んでいる人物、はしゃいでいる人物を見守っている母親のような立場になっている、とも捉えられそうではありますが。それはさすがにないだろうと思うのですが、どうなのでしょう。

 ……個人的にはですね、クラスメートとの交流を描くなら、どうして今の段階になって登場済みのキャラクターについて「誰々はこういう性格だ」という描写が入るのか。とか、考えてしまいはするのですよね。しかもその性格の説明が、一年前からの友人である主人公ではなく他のクラスメートからされるというのが、感覚的におかしいと感じてしまうのです。
 ここ、みらいを満面の笑みにして、うんうん頷かせておくだけで大分印象が違ったと思うのですけど、どうなのでしょう。

 あと、これ、今までの描写を考慮するならここら辺のアイデア出しって、恐らくみらいが全部決めていたのだろうと思うのです。でもクラスメートの活躍を入れることになった。結果、みらいの出番がなくなったと、そんな感じがします。

 ていうか今回の35話、実はみらいがいなくても成立してしまうのですよね。
 完全に蚊帳の外にいる状態となっています。
 リコが生徒会長にどうして自分が立候補してしまったのか悩んでいる場面でも、それは見られます。『魔法使いの夢と同様に、いつも何をしたいのかがわかっていない』とリコは悩みます。
 その際、生徒会長になるためのスピーチの原稿のことが話題となっています。それでリコは魔法使いのことには触れず、「いつもそう、何をしたらいいかわからない」とだけ言います。だからみらいは、単純に「集めたお願いを実現すべきなのだろうけど、それで本当に良い学校になるかわからないよね」という意見だけを述べるのです。
 このように、35話から完全に切り離されてしまっています。先ほど書いた通り、みらいが展開上不要な、邪魔なキャラになっています。

 切り離され方も、本当に主人公らしくない。
 これ、上記の30、31話の通り、人の悩みに鈍感である描写そのままなのですが、「いつもそう」という発言を聞いてもみらいは気付かないのです。以前にリコから「立派な魔法使いになったとき、どうしたらよいかわからない」という告白を聞いているにも拘わらず。
 そりゃあ確かに、ここでみらいがリコの悩みに気付いてしまったら、ゆうとと選挙で競っているという部分がぼやけてしまいます。展開の都合というのはわかるのですが、ヤキモキします。みらいがリコの態度に対して疑問に思う表情を、ほんの少し入れるだけで違うのではないかと思ってしまうのです。ただ、それだけです。

 で、そろそろ貶すような内容は止めて、今回の目玉であるゆうとの事に移るとしましょう。
 単純に、彼関連の描写は良かったと思います。
 花壇が壊れたままにされていたこと、図書室の本が整理されていないせいで人がほとんど立ち寄らないこと、校庭では違う部活間の諍いが絶えないこと。
 上記の問題が放置される状況って、それつまりみらいたちが通う学校って不良校なんじゃないのっていう疑問は置いておいて。……だってそういうのって、花壇は用務員さん、校庭での諍いは先生方が気付くべき部分でしょう。現実味があるのは、図書室の本が整理されていないくらいだと思います。
 わかるのですよ。不良校でなくても、そういう状態になっている学校はあるでしょう。忙しくて放って置かれてしまっていると言うことはあるでしょう。
 でももう、ここについての筆者のスタンスははっきりしているのです。こういう悪い部分を担当するために、今回で言うデウスマストの眷属たちがいるんじゃないのって思っちゃうのです。
 ただまあ、上記のような状態が悪いことであると示しているだけ、今作にとって相当マシな状況ではあるのですけども。

 てかやっぱり貶してしまうのですが、みらいたちの住む町って荒んでますよね。リコは自転車で轢かれそうになるわ(交通ルールをしらなかったのもありますが)、まゆみは転んだときに見て見ぬ振りされるわ。かなは魔法使い探しをバカにされるわ。そして上記。……何なんでしょうね、これ。自分はむしろ話が多少ずさんだろうと、こういう部分がある方が違和感を覚えます。
 誰も傷つかない優しい世界を作れと言いたいわけではないのです。今作でこんな世界を描く必要性が感じられないと言いたいのです。だって厳しさは、本来敵が教えてくれるはずなのですから。……あーだから今作は敵に存在意義がないのか、納得したくないけど納得。今作の敵は人間同士なんだ、というのは穿ち過ぎていますけど、要は味方でも助けるべき対象でもないってことなのだなと。

 ともかくゆうとの学校を良くしたいという思いが描かれている部分は説得力がありました。花壇の件も含めてしっかり描かれていたと思います。ことはが花壇でのやりとりの中でゆうとも応援することを決めたこと、リコもまた図書室でゆうとと会話をしたことで、ことはの応援したい気持ちを理解できると言ったこと、これら全部がしっくりくる描かれ方をされていました。
 ……みらいは何もありませんでしたが。入れる時間の余裕があったかは判断が難しいところですが、そのせいでみらいはいなくても良いのではと言う印象が強くなっている気がしました。

 戦闘描写ももう、みらいが不要であることを浮き彫りにしています。
 リコとことはがゆうとの行動を見て力を増すのは違和感がないのです。説得力がある。みらいがパワーアップした理由が本当にわからない。リコが元気になったから、くらいしか思いつかないのです。
 ここまで徹底してみらいを話に関わらせないところを見ると、今回の脚本家さんがみらいについての問題提起をするため、あえてそうしているのではないかとすら感じてしまいます。恐らくは苦手だから描写していないだけなのだろうとは思いますが。

 みらいたちが精霊について校長に説明を受けた描写がされました。自分たちの何かを見られているのだということも、自覚しました。プリキュアとして相応しくあれ、と言ったことが提示されたわけではないので、彼女らの行動は変わらないでしょうけども。徹底して使命感の排除です。

 何やら敵に偵察されている描写がされだしました。オルーバは人間に興味があり、人間の発明品である本にも感心があるようです。
 僕たちはプリキュアのことを知らなければならないと、ひと味違う様子を見せています。でも撃退されますね、これは、さすがに。
 チクルンだけ改心する運びでしょう。理由はビジュアルです。かっこいいは撃退対象になり得ますが、可愛いは保護対象です。
 ともかくここら辺は特に書くことはないですね。

 今回はガーネットに認められました。「大地のリンクルストーン」だそうです。早くもモチーフと結びつけることが断念されました。でもそれで良いと思います。ここで、覚えている人の方が少数派であろうモチーフ(「○○のリンクルストーンモフー」と、登場時に一回だけしか言われてないですからね)に縛られて物語が破綻するくらいなら、無視した方が得策なのです。

 ところで立候補者が二人しかいないというのも、すごいことだなと思いました。どんだけみんな嫌なんだよと。この学校ってクラス数少ないんでしたっけ? というのが無駄なくらいには、体育館に人が集まっていたのですよね。
 まあここら辺は作劇の都合というやつなのでしょうけども。ただまほプリはこの作劇の都合を斟酌してあげなくてはならない場面が多すぎる気がしますね。

 次回はチクルンの偵察がばれるようです。はてさてどうなることか。

 で、余談なのですけど、まほプリってテーマは「手を繋ぐ」となっているのです。でももう一つ裏のテーマみたいなものを持っているように思うのです。
 それが「夢」です。それも、形を成していない夢です。リコの立派な魔法使いになりたいという夢がまだ具体性を持っていないことと、みらいは夢を持っていないこと、ですね。リコの方は本編で明確に描かれていますね。なので、みらいの方を取り上げます。
 みらいは実を言うと、無敵という評価の通り苦手な物が無いのです。だから言うなれば、何でも目指すことができる状態にある。そして彼女自身も一応は、色々な物に興味を持つ人物として示されてはいる。数学が苦手なことが判明した回で、色々なことに興味を持っていた描写がありましたから。そして苦手な数学も克服している。あー一応、その回以外のことはひとまず忘れてください。
 だからまあ、補習編でも感覚で魔法を成功させているのですよ。みらいって。何でもできるけれど空っぽなのです、彼女は。
 で、そんな人物が何を目指すのか、というのは恐らく、今作のとっておきなのではないかと思うのですよね。隠し過ぎて砂上の楼閣と化していますけど。何を目指したら良いかわからない人物が、何を目指すか決めていく物語って、片手間で描いて良いテーマではないですから。
 みらいがこれから何かを見つけるとしたら、その部分の描写は失敗する気がするのですよね。……まあ、何となく、避けるのではないかなと言う気がしています。私の夢探しはこれからだ、で締め括るのかも知れません。それか最終回で、「魔法界で勤めるのが私の夢!」くらいが無難なように思います。みらいに積み重なってきた要素を考えると、それが妥当なように思います。



魔法つかいプリキュア! Blu-ray vol.1

 ※上記以外の物でも良いので、リンク踏んで何かを買っていただけると励みになります。



過去感想は下記より
アニメ感想:2016年秋期まとめ