※ネタバレあり。
  筆者の方針は元々、「こう考えれば、楽しめるんじゃない?」という脳内補完をするのが原則です。今作でもそれをできる限り徹底していくつもりでいます。
  できない作品ももちろんありますが、極力。
  あと、少しだけ前作のまほプリに触れさせて下さい。少し、書かずにはいられないことがあるのです。


 ゆかりのキャラクター、本当に面白いですね。そして変な話、便利だなとも思いました。
 リオに対して正体を看破すること、リオの事情を汲み取ること、その両方を彼女が担っていることが、その証明になっているかなと思うわけです。

 と言うか今回の内容、本当に盛り沢山ですよね。正直あらすじをどうしたものかと悩んでいます。
 ゆかりの抱く悩み、それを言葉で形にしたリオ。そもそもゆかりの悩みを理解できてしまうリオの胸中たるや。いちかが動くことで、ゆかりが好きな物を知るきっかけとなる。ジュリオの正体を看破するための、ゆかりの作戦。
 それら諸々を一話に詰め込んでいることに、ただただ驚くばかりで。

++あらすじ++
 ゆかりの家で茶道の茶会が催されることになるが、ゆかりは乗り気でない。祖母も好きにしなさいと言う。
 キラパティの仕事にも参加せず物憂げにいる。そのまま仕事もせずさらっと帰ってしまうほど。いちかは見捨てられたのかとショックを受ける。
 ゆかりが佇んでいると、あきらが現れる。悩み事か訊ねると、その祖母に言われた「好き」の部分に悩んでいるのだった。好きとはどういうものかと。そこに現れる高いところが好きなリオ、ゆかり以外のキラパティの人たちには好きな物があると指摘する。あきらは接客、いちかはスイーツ作り、ひまりは仕入れ、あおいは力仕事。
 あきらが「ゆかりがいてくれて助かっている」と反論しようとするのを、ゆかりは面白くないことを言わないでと制する。
 リオが悩みの相談に乗るというのに、ゆかりは「どうしてキラパティの人々に詳しいのか」と訊ねる。顔をしかめるリオ。

 そこに現れるいちか、とにかくゆかりを交えて、何か楽しいことをと提案しようとする。
 その中、ゆかりは面白くなりそうだといちかたちを茶席に招くのだった。
 茶会にはリオも呼ばれていた。ゆかりが茶道のお手前を披露する。
 感心するひまりに、ゆかりの祖母は「ゆかりは作法を覚えるのが得意」だと説明する。心踊ることをするようにと言っているとも。
 その茶道をリオは、見ただけで覚えてしまう。いちかもやろうとするが、足が痺れて動けない。

 その後、池の前でリオはゆかりに言う。気持ちがわかると。何でもできるが、特技はない。だから好きにしろと言われても困ってしまうのだと。
 それにゆかりは「姉がいる」ことを告白する。両親も祖母もそちらにかかりきりで、自分を自由にさせている。だからそれが苦しいのだと。リオはそれに企んだ笑みを浮かべる。

 その後、いちかは別の茶室でゆかりが準備をしているところを見つける。次のお客様を迎える支度をしているという。お客様に楽しんでもらうための小さなこだわりが、おもてなしの心になるのだという。
 そしてゆかりに「ゆかりさんのお菓子を扱っている手が好きなのだ」と言う。「すごく綺麗で優しいから」と。そしていちかはスイーツのアイデアを閃く。
 ゆかりに、キラパティで茶道のお手前を披露してもらうことにしたのだった。名付けて海の茶室。シロイルカの大福に、プリキュアたちのイメージカラーに合った果物(あおいはグミ)を咥えさせて。
 いちかは招待状を色んな人に出していた。そして、ゆかりのファンはもてなされて感激する。

 茶会が終わった後、ゆかりがいちかのアイデア勝利だと言うのに。いちかは「こんな心がバッシャーンとなるおもてなしができるのはゆかりさんだけ」だという。ゆかりは笑う。そして、自分は茶道が好きなのね、と目を輝かせる。
 いちかはリオにも招待状を出していたようだが、来ていなかった。

 ゆかりのファン軍団は感激のあまりに涙をハンカチで拭おうとするが、一人、ハンカチを持っていない。
 そこにジュリオが現れる。
 ゆかりは忘れ物のハンカチを届けようとする。追いついたところ、ファン軍団はジュリオにキラキラルを奪われてしまっていた。
 ジュリオは驚き、怒りの表情を浮かべるゆかりに「油断しちゃった?」「いい表情だ」と煽る。
 ゆかりはマカロンに変身して戦いを挑む。ジュリオはアメリカンクラッカーを作り出す。空中戦を繰り広げるが、ジュリオに手を絡め取られてしまう。
 ジュリオは拘束されたゆかりに、得意になって言う。「両親と祖母が姉の世話ばかりするから、寂しかったのだろう」と。
 ゆかりは笑みを浮かべる。姉がいるというのは、リオにだけ教えた嘘だったのだ。
 彼女はジュリオを圧倒する。必殺技でマカロンを放ち、回避したと思い込んだジュリオに、マカロンから爪を飛び出させて攻撃する。
 そして、「油断しちゃった?」とやり返す。そこに変身したいちかたちが駆けつける。必殺技を放ち、アメリカンクラッカーを浄化する。
 退散するジュリオを、ゆかりだけが悲しげな表情で見つめている。

 後日、祖母にお茶を振る舞うと辛い評価を受ける。それにゆかりは嬉しそうにする。それはまだ楽しめることなのだなと。祖母は呆れた様子。祖母は話題を変え、リオが点てたお茶に、不信感があるようだった。ゆかりも同意する。
 一方ジュリオは、ペコリンと一緒にスイーツ作りにいちかへ、狙いを付けていた。今まで以上の憎悪を抱きながら。
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 あらすじはこんな感じ。すごく、すごく苦労しました。細部間違っていたら、申し訳ないです。
 なんというか、感想の書きづらい回でした。素晴らしく面白いのに、それを言葉にし難いというか。

 ともかく作法を覚えるのが得意。という、ゆかりの祖母の発言、すごい一言ですよね。彼女の発言一つ一つは、ゆかりがどうしてこんな性格になったのかを、如実に表していて好きです。
 祖母の発言では、「心踊ることをしなさい」と言う部分も好きですね。これもまた、ゆかりの表情を僅かに曇らせる理由になっていて、リオが付け入ろうとする事にも繋がっている。
 で、彼女の「作法を覚えるのが得意」という言葉は、ゆかりが何たるかを、この一言で表しています。

 祖母の言葉の意味はリオが作中で示してくれているわけです。ゆかりは何でも完璧にこなせる。しかし、好きなことではない。だから、好きにしろと言われると困る。
 好きがわからないから、相手を試すようなこともしてしまう。
 そんな風に、ものすごくわかりやすく説明してくれている。ジュリオは本当に、清々しいほどに適した敵だと思いますね。
 で、そんなジュリオも、型を真似るだけでは駄目だと言う発言に怒りを覚えるわけです。これ、つまりリオもその部分について事情があると言うことです。恐らく、ゆかりと似たような事柄があるのでしょう。技術偏重なスイーツを作って、気持ちを込めていなかったために、美味しいと言ってもらえなかったとか。
 丁寧に敵のキャラクターの事情を描いていっている、そんな印象を受けます。ガミーたちに対しては、襲ってくるのを撃退しているだけだった。ジュリオに対しては「どうして私たちの身近な人を狙うのだろう」と、プリキュアたちで議論をしてもいるという。
 段々と、プリキュアの成長に合わせて、敵との関わり方も変えていっているのが興味深いです。

 ただ、少し気になるところが一点。一回だけ、身近な人以外が狙われたことがありました。その人はどうなったのだろうと、今になって思います。
 今後、何かしらのフォローはあるのでしょうか。

 それはともかく、どうして身近な人を襲うのかという点でも、ゆかりの面白さが現れています。
 冒頭、ジュリオがプリキュアたちの身近な人を襲うという話が為されているとき。ここで、「なら次は」と自分の番が回ってくることを思案しているところでしょう。この描写があるから、「物憂げでいればリオが接近してくるのではないか」と彼女が考えたのではと推察することもできるという。
 加えて、彼女はジュリオとの初対決の際に、彼の名前を面白がってもいるのですよね。その結果、状況証拠を積み重ねて鎌をかけだと受け取れる内容になっているという。
 中学生組が目の前の問題解決を図る役割を持っていると最初は思っていましたが、これ、違うようですね。ゆかりとゆかり以外が明確に差別化されているのだなと。

 ゆかりについては、もう明らかに表現が大人向きなのですよね。リオと対峙するときの描写も。正体を見破るためにした行動も。
 リオがジュリオであることを看破するためにした行動が、「姉がいる」と嘘をつくことなのです。それだけでも面白いのですが、これ、明らかに「リオだけ」に嘘をついているのです。そうすることで、ジュリオが「姉がいて寂しかったのだろう」と発言したことが、「リオ=ジュリオ」の証明になっていると言う。
 要は、ゆかりに姉がいると勘違いした人物は「リオだけ」という状況を作り出している。
 こんなの、本当に大人向けの描写だと思うのですよ。好きなことがわからない苦悩も、明らかに一線を画しています。

 で、ゆかりって何となく、みらいを描き直した部分があるのかなと思いました。
 みらいも「夢がない」部分が描かれていました。そしてそれは、悩みとしては描かれていなかった。あくまで彼女を楽しませる要員になっていました。何にでも興味を持つ、と言う描き方として。更に彼女は、何かを始めた場合、何でもできる人物として描かれていました。そのことについても、悩みとして扱われていませんでした。
 要は、何にでも興味があり、それらを大体上手くこなせて、そのことを彼女も楽しんでいる。と言う描き方です。
 ゆかりの場合は、それらの要素を明確に悩みにしている印象があります。何でもできるから、楽しいわけではない。と言う部分に踏み込んでいるのかなと思います。

 いちかがゆかりに対して、見捨てられたのではないかと心配するのは、母親のことがあってのことなのだろうなと思います。彼女は自分の傍から人がいなくなることを、酷く恐れている印象がある。
 4話「3人そろってレッツ・ラ・まぜまぜ!」という、当時の自分はいまいちだと感想で書いてしまった回がありますが、そこで顕著に行われている印象がありますね。
 あとはまあ、いちかがゆかりが離れていかないか不安な様子でいると、「おいファン軍団トラウマになってんじゃねえか」という感じもしますね。一度和解はしつつも、ゆかりの態度が態度ですから、不安になるのは仕方ない気がします。何せあきらは「好きでここにいる」と発言しているけど、ゆかりは何も言っていないですからね。
 今後は「茶道が好きなのに気付けたのはいちかのおかげ」といった発言したこともあり、ゆかりが離れていくなんて事はないのだろうと思いますけども。

 ひまりがリオも茶席に誘われたと知ったときに、嫌そうな表情するの、良いですよね。嗜虐心をそそるとかではないですよ、一応。
 彼女は動画投稿の際に「頑張るな」と、直接的なことを言われているのですよね。そして彼女は過去の経験から、こういう発言には敏感なのです。だから、リオが言ったこともしっかり覚えているという。そのためリオの参加にも、あまり良い顔をしない。
 過去の描写をしっかり踏まえている、良い描写だと思います。

 素晴らしい回でした。ゆかりと言う人物を丁寧に描ききった、本当に巧い回だったなと。
 次回はとうとういちかがジュリオの魔の手にかかるようです。変身できなくなってしまうとは、果たしてどうなるのか。



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過去感想は下記より
アニメ感想:2017年春期まとめ