※ネタバレあり。
  筆者の方針は元々、「こう考えれば、楽しめるんじゃない?」という脳内補完をするのが原則です。今作でもそれをできる限り徹底していくつもりでいます。
  できない作品ももちろんありますが、極力。あと、前作、前々作のことに触れます。まほプリとゴープリですね。テーマ的に感じる物があったので。都合上、まほプリを批判的に書きます。まほプリを楽しめなかった人間の感想となります。ご注意下さい。


 大体予想通りだったという、そういう話です。今作には予想の的中と言うことが多い点を考えると、やっぱりわかりやすさも大事な要素として組み込まれているのだろうなと思います。
 何気にいちかのバックボーンが描かれたのだなと、思ったりしました。彼女の笑顔の裏には、母との約束があったというわけです。彼女が以前に作中で泣いたことがあったかどうか、気になりました。思い出せないので、無いのかなと思ったら、一話で泣いていたのですね。がっつりと。これってつまり、人の前では明るい態度で、と言うことなのだろうなと。

++あらすじ++
 回想。幼いいちかに母はいつも笑っているように言う。そうすればみんな笑顔になるからと。
 キラパティを営業するいちか、そこに走り込んでくる女性、それは彼女の母親だった。抱き締められ、いちかは抱き締め返そうとするのを耐えるのだった。

 ゆかりは母親がいつまでいられるか訊ねる。明日の昼だと、彼女は答えた。
 いちかはあおいにより、キラパティ営業終了前に、店を出される。
 いちかが母親に望んだのは、町を歩くことだった。そうでないと会話できないから、いつも通りでよいと。
 いちかは夕飯の後にケーキを作ってあげることに、しかし夕飯後、母に電話が。いちかは表情を曇らせるが、ひとまずその場は何もなく。しかしいちかは母を気遣うような発言をする。
 いちかも疲れているだろうと言う父の提案で、ケーキ作りは翌日に。

 夢の中、いちかは中学生の時のことを思い出していた。外国に行かねばならなくなった母を、笑顔で送り出したのだ。
 目覚めたとき、いちかの表情は泣きそうに陰っていた。しかし彼女は笑顔を作り、ケーキ作りを始める。
 だが、何度やってもスポンジケーキが膨らまないのだ。キラキラルが足らない。ペコリンは言う。キラリンも、それはいちかの気持ちが原因だと言う。
 両親の前に失敗したスポンジケーキを見せるいちか。父は気を使ってその場を後にする。
 すると母はいちかのことを強く抱き締めるのだった。こんなに優しい子に育った。もっと甘えさせてあげられたらと。そうして涙を流す。
 いちかもまた、感極まって泣くのだった。自分が笑顔ならみんな笑顔になる。だから母親にも笑顔で出発してもらうために、笑顔でいるんだ。そんな言葉を言いながら。
 いちかはその後、ラストチャンスとケーキ作りを再開する。
 そして晴れ晴れとした様子で、母を空港へと送ろうとしていた。

 そこに、グレイブがキラキラルを奪っているのを目撃する。
 いちかはやらなきゃいけないことがあるからと、母にケーキを渡し、笑顔で走り出す。そしてホイップへと変身を遂げる。
 駆けつけてくる他のプリキュアたち。グレイブの部下は炎を操り、プリキュアたちを圧倒する。

 いちかの母は空港で包みを開いていた。そこには彼女のサングラスをかけた顔が描かれた、見事なショートケーキがあった。
 
 ホイップは攻撃に相対する。そして、笑う。何故笑うのかと、グレイブは問う。ホイップは答える。「私はみんなの笑顔のために闘う」のだと。そして敵の攻撃を圧倒する。
 その隙に必殺技を放ち、敵を撃退、撤退させる。そして、いちかの持つ結晶も遂に形を変えた。

 母は空港を飛び立っていた。その飛行機を見て、いちかはいってらっしゃいと言う。

 一方敵のアジトでは、エリシオが意味深に微笑んでいる。ノワールの意図を汲んだように。
 そこではビブリーがノワールから力を受けとっていた。今回が最後のチャンスであり、ノワールへの愛情を見せろと。
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 あらすじはこんな感じ。ぎゅうぎゅう詰めの印象。

 敵が登場して、それを倒すというノルマ。プリキュアが六人もいるという事が、些細な事ではある物の違和感となっていたように思います。ここはもう、致し方ないと言う他ありません。むしろ清々しさを感じるほど、いちかの描写を描くことに専念していたので、そういうことならよしという納得感がありました。

 で、いちかが明るい理由が描かれたのが、すごいことだと思うのですよね、これ。
 彼女は生粋のヒーローだったと、暗に示されたようなものだと思いました。
 極端な書き方をするなら、いちかが明るく笑顔なのは、幼い頃に母親から与えられた使命なのです。彼女はそれを、思春期であるはずの中学生になっても続けていたという事になる。
 以前に筆者は彼女の機微を直情的と評しましたが、確かにその通りだと思いました。目的はたった一つ、ただただ「みんなの笑顔」だったのですから。
 ……貶す言葉になってしまうのですが、「おバカ」、ですよね。だって、そんな幼い頃に言われた教訓なんて、どこかで忘れてしまってもいい物なのに。実体験として、守るにせよ守らないにせよ、忘れないとは思いますが。
 個人的には、幼い頃のことはずっと影響していくと思ってはいます。ただ、その影響をずっと言い続けるのもまた、変な話で、言うなればいちかにとって母親に与えられた目的はもう、自分の中の一部となっているわけです。目的のための行動は、その人物の人格形成に強く影響する。
 話を戻しますが、だけど正義の味方は、正にそのバカだからこそ成せるものなのです。

 今回の内容を見ていて思っていたのは、「Go!プリンセスプリキュア」のはるかと比べると面白いキャラクターだなと思ったのですね。はるかもまた、過去の経験を心に抱いて作中ノーブル学園へ入学しています。ただ、はるかは自分の夢を「恥ずかしいこと」だと思い、人には話さず過ごしてきたのです。
 一方いちかもまた、人に母との約束を話している描写はありません。ただ、その約束を行動として示しています。その「自分の笑顔が相手も笑顔にする」という、「そんなに世の中簡単ではないよ」と言われる可能性のある事柄を、信じ続けてきたのです。
 それで何が面白いかというと、どちらも過去の経験が現代へと繋がっているキャラクターですが、そこに対しての視点が違うわけです。「プリンセスになる」と言う夢と「みんなを笑顔にするために笑顔でいよう」という目的では、もちろん意味合いが異なります。ただ、その指針と言えるものへの態度で、キャラ造形がここまで変わるのが面白いなと思ったのでした。

 加えて書くと、この、一つの事柄を抱き続けるということがどういうことをもたらすのかと言う部分に、今作は間接的にでも勝負をしているように思いました。
 前述していますが、はるかはこの点について、恥ずかしいと本人も感じているという回避策をとっています。酷い書き方をするなら、もし彼女がノーブル学園に通わず、プリキュアにもならなかったら、静かに消えていった夢だったはずです。そうなってもおかしくなかったという描写が間接的にされていた。
 一方今作のいちかは、信じ切って行動している。そしてその弊害が確かにある。母親の前でさえ、彼女は気丈に振る舞い続けたのです。母親が涙を見せて抱きつくほどに。いちかが明るく振る舞うのを見て、母親の表情が感極まっていく様は見事と言えます。今回、堪えきれずに泣き出す描写が入ったことで、その部分の問題を解消しているわけです。泣きたいときは泣いても良いのだと、暗に示すことで。
 ここら辺、本当に面白い描写なのですよね。いちかが泣き出すのって、母のさとみが涙を流して、その涙がいちかの肩に滲んでからなのですから。目的を与えた母親が泣き出していると言う事実が、いちかの感情の堰を切ったのです。

 今回、そのような細かい描写の連続です。ゆかりはさとみのふとした表情から、長い時間いることができないことを察して、即座に「いつまでいられるのか」を訊ねている。
 電話が鳴るとき、いちかはびくりと反応し怯えた表情を見せる。そんな様子に父は気付いていて、翌日さとみといちかを二人きりにさせてあげる描写へと繋がる。
 いちかを描くのに、全力を尽くした回だったなと思いました。

 それでついでに書くと、あきらやゆかりのことといい、今作は前作、前々作の描かれなかった側面をテーマとしているように思えるのです。
 あきらのことは前話で書きましたね。頑張ることの限界、です。「Go!プリンセスプリキュア」きららの場合は周りが助けてくれた。あきらの場合、助けをもらうのに限界のあるみくという妹がいる。15話でゆかりがみくを評するのに言っていた、「守られているのはあきらの方かもね」という言葉って、みくのこれからを暗示しているように思えてならないのですよね。質<たち>の悪い作品の見過ぎなのかも知れませんが。
 ゆかりはもう、「魔法つかいプリキュア!」のみらいの好対照でしょう。みらいもゆかりも完璧超人として描かれていて、一方はそのことに悩まず、一方は涙するほどに悩んでいた。別に善し悪しを書くわけではありません。みらいという人物に与えられた使命は、そのことに悩むことではなく、その性質を活かして人々と接していき、仲良くなっていくと言うことなのですから。
 少し毒を吐くと、そんな人物が周りと仲良くできるわけがない。むしろ理解されずに孤立するだろうと思う訳ですけど。だからゆかりと言う人物が生まれたのではないかとすら、筆者は考えているわけで。まほプリのライター陣の一人が、ゆかりのエピソードを専属で書いていることも、その裏付けになっているような気がしてしまっています。……捻くれていますね。
 ただ、それはあくまで現実の話で、みらいのいる世界とは違うのですね。まほプリは「みらい」が承認される世界なのです。それは、かなが忌避され、転んだまゆみが大人たちに無視されるのに対し、みらいにそういう描写が一切なかったことからもわかります。まほプリの話題に偏りすぎているので、止めましょう。
 ともかく、ゆかりはそういった、完璧であること、そう扱われる事への苦悩を描いている。それはみらいでは描かれない側面だった。あるいは、ゆかりのように自らで楽しさを見つけるということを、1話の時点で既に悟っていたということになります(変な書き方をすれば、みらいはエンディングを迎えた後の人物が1話から登場しているような物なのでしょう)。だからといって、この後のゆかりが未来のようになるわけでは決してないですけど。それで、ゆかりの悩みの方は、ひとまず数話前に決着したと、そういうことなわけです。

 今回いちかのルーツが描かれたので、久々に過去の感想を見返してみました。
 キラキラルを吸われたスイーツの扱いに言及したり、スイーツ作りの優先順位のことを気にしていたり、なかなかに気が立っていたなと自分の事ながら思いましたね。
 前者はその話その話の演出で、スイーツが消滅するかが決まる臨機応変なものとなっていました。後者は店をオープンする際に「いちか以外は暇じゃないよ」と予め描写されて事なきを得ていました(何気にここら辺ギャグ調ながらえぐいことされていますね、いちか)。そのため、いないときはそれらの用事でいないのだと、考えることができるようになっている形になっていますね。今のところ揃っていない描写の方が少ないので、みんなが揃っている場面での話が描かれているのだろうと思います。

 ただ、やっぱり思うのは、キャラクターの多さですね。いちかが明るいことには理由があるのだと言うことを、今回確かに納得できたのです。ただそれは納得しただけであり、強く心を揺さぶられるような要素ではなかったというのが、筆者の正直な感想です。
 実はそうだったのだという事実は確かに、彼女の過去の行動に対しての意味づけを得られました。しかし、意味づけられただけだなと言う、そんな感覚。どうすれば筆者が感動したかと言っても、具体的な案は出てこないのでしょうけど。恐らくは、いちかが仲間の前などでも泣き出しかねないような、それでも気丈に振る舞うと言った描写がもっとされていたら、もっと違っていたのかも知れないなと、感覚的に思いました。
 彼女ががっつりと泣いたのは前述の通り、ガミーとペコリンの前だけなのですよね(記憶違いがあったらすみません、もしかするとギャグで泣いていたりするかも知れませんし)。

 ともかく、水晶も結晶化して、いちかも笑顔のために戦うと決意を新たにして、プリキュアたちの心の成長が済んだのだなと言う、中盤の終わりを感じさせるエピソードだったと思います。

 次回は過去のプリキュアが登場し、新たなアイテムを授けてくれる模様。アイテムが登場すると、いよいよ終盤という実感が湧いてきますね。
 OPは、アイテムが手に入ったタイミングで変わるのかなとか、そういうことを考えたりします。



キラキラ☆プリキュアアラモード! Blu-ray Vol.1

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過去感想は下記より
アニメ感想:2017年夏期まとめ